Show notes
「にせ物語」は、「昔、男があった」で始まる「伊勢物語」の「こころにならい」書かれた短章です。偶然、久しぶりに再会した知人の男と昔話をして別れようとする時、「男」が負ぶい紐で「女」の背中に幼な子が落ちないように力を込めてしっかりとくくりつけるその一瞬で「女」の心をすくい取っています。「ぐうだらの彼女の夫」はそのようにしてくれたことはなく、「女」は、自分の伴侶の選び方が誤りではなかったのかと思いをいたすのです。ひょっとすると「男」は、たまたま経験があってそうしてくれたのかもしれないし、「夫」は、不器用でいつまで経っても加減がわからなかったのかもしれないのに。この時「女」が、「男」にあって「夫」に無いと思ったのは、「女」の心を考えた行動なのでしょう。「負ぶい紐」がくくりつけていたのは、「女」に対する心遣いの違いなのかもしれません。<文・白根直子>

