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FRBのケビン・ウォーシュ新議長が初めての会合に臨みました。弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイケル・ウィルソンはそれを受け、新議長の信頼性のために市場には短期的な痛みをいくらか経験してもらう必要があるかもしれないと話しています。いったいなぜなのでしょうか。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイケル・ウィルソンが、FRB新議長についての自身の見解と、先週の連邦公開市場委員会(FOMC)の解釈の仕方についてお話しします。このエピソードは6月22日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。本日は、今年に入ってからの比較的重要なイベントのひとつだと私が考える出来事について、お話ししたいと思います。それはFRBのケビン・ウォーシュ氏が議長に就任して初めて開いた会合です。具体的に言えばウォーシュ氏は、非常に微妙な時期に自らの信頼性を確固たるものにしようとしています。景気は多くの予想よりも好調に推移していますし、インフレはまだ目標値を上回ったままです。おまけに市場は、考えるべきことを中央銀行から正確に教えてもらえる状況に慣れてしまっています。ウォーシュ氏が新議長に指名された今年2月に、私は、市場の信頼性を高めることが目標なのであればこの人事は正解だと申し上げました。当時は、貴金属が放物線を描くように値上がりしていました。私に言わせれば、これは悪いシグナルでした。政策当局は米ドルレートの無秩序な変動やインフレ問題の拡大を招くことなく好景気を本当に維持できるのか、と市場が問いかけているように思われたのです。ウォーシュ氏の指名以降、金価格に対するS&P500種株価指数の比率は40%近く上昇しています。私はこれを、市場からの強い信任の証だとみています。この比率はまた、投資家がウォーシュ氏に「疑わしきは罰せず」の原則を適用していることを示唆しています。彼ならFRBを改革できる、政策手段としてのバランスシートへの依存度を引き下げられるし、規律を強化して政権が一息つけるようにできるだろう、と投資家はみているのです。しかし、ここに落とし穴があります。信頼性の強化は、いつでも痛みを伴わずに実行できるとは限りません。実際、信頼性というものは、市場がすぐには評価しないことを行って獲得しなければなりません。そして先週の市場には、その雰囲気がいくらか漂っていました。株価は下がり、イールドカーブはベア・フラット化し、米ドル高が進み、貴金属は急落しました。私が見る限り、ウォーシュ新議長による初めてのFRB会合は失敗ではありません。むしろ良好な、必要な第一歩を踏み出せたとみています。最も際立って見えたのは、ウォーシュ氏が物価に関するマンデートを強調したことでした。FRBの主たる責任は物価を安定させることにある、労働市場のあらゆる変動を管理することではなく、あらゆるリスク資産の解約をならすことでもなく、データが出るたびに投資家にその解釈の手がかりを提供することでもない、とウォーシュ氏は非常に明確にしてみせたのです。率直に言わせてもらえれば、インフレ目標の未達が5年も続いていただけに、このメッセージの発信は遅すぎました。景気は上向きで、民間雇用統計も改善していることから、FRBにはこのメッセージのとおりに行動する余地があります。このことはFRBがすぐに利上げに踏み切るとか、年内には必ず利上げがあることを意味している、とは思いません。意味しているのは反応関数が変化したこと、そして市場はFRBがたどる道のりについての不確実性を好まないということの2点です。もう一つの大きな変化はコミュニケーションです。ウォーシュ新議長は、過度なフォワード・ガイダンスから離れていくように見受けられますし、私自身もそれは非常に健全な展開だとみています。私はもう何年も前から、FRBは市場行動の形成のみならず、投資家によるデータの解釈の仕方においても影響力を持ちすぎていると論じてきました。FRBが次に言うことを予想しようとするだけの市場であれば、FRBは市場でつく価格を独立したシグナルとはみなせなくなります。これではあべこべです。市場は新たに入ってくる情報に反応するべきであり、FRBはそうした市場の反応から学ぶべきなのです。順番が逆になってはいけません。FRBによる解釈の手がかり提供が少し減るだけでも、投資家は落ち着かなくなるかもしれません。しかし皮肉なことですが、もっと安定した状態に至るにはそうすることが必要です。短期的には、投資家は気に入らないかもしれません。しかし、システムがうまく機能するのは、市場価格が政策の操作の影響をあまり受けずに決まるときです。群衆の知恵は委員会の知恵を上回ることが多いのです。株価の当面のリスクは、利上げでもなければ不確実性でもありません。流動性です。FRBのバランスシートを使った支援はすでに縮小し始めています。準備金管理プログラム(RMP)はピーク時からおよそ75%縮小しており、米国債の買い入れも50%減らされています。それと同時に貸し出しの伸びが加速していますが、これは実体経済での資本の利用が増えているためです。この組み合わせは流動性がタイト化しつつあることを意味しており、弊社の分析によれば、この現象は7月にかけて株式市場の向かい風であり続ける恐れがあります。結論を申し上げますと、株式市場はウォーシュ氏の決意を試すかもしれません。それこそが市場の機能にほかなりません。重要な問題は、FRBが長期的な信頼性を高めるために短期的な痛みを許容するか否かです。私自身は、FRBはまさにそれをやろうとするとみています。ただしそれは、資金調達市場、クレジット市場、あるいは債券のボラティリティのせいで、流動性の供給を増やしたり金融を再度緩和したりせざるを得なくなるまでの話です。したがって株式市場では当面、好業績主導の次の上昇局面が始まるまでは、株価の変動が大きくなったり、場合によっては株価の調整があったりすることも予想されます。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。



