市場の風を読む
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Morgan Stanley
AIメモリーの高コスト
7 minutes Posted Jun 8, 2026 at 7:00 am.
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AIによる膨大なメモリー需要のために、データセンターからスマートフォンに至るあらゆるもののコストが上昇しています。その影響は、テクノロジー業界をはるかに超えたところにまで及ぶかもしれません。弊社欧州・アジア・テクノロジー・リサーチ責任者のショーン・キムがご説明します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト  市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は弊社欧州・アジア・テクノロジー・リサーチ責任者のショーン・キムが、メモリーチップの値下がりが止まり、値上がりに転じて品薄にさえなる現象、いわゆるチップフレーションについてお話しします。このエピソードは6月8日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。使っているノートパソコンが遅くなったり、スマートフォンが値上がりしていたり、クラウドサービスの利用料金が跳ね上がったりするまでは、人はメモリーチップというものの存在を無視してしまいがちです。メモリーは、いわばコンピューターの作業スペースです。この部品はコンピューターがそのとき必要とするものを何でも抱え込みます。それがウェブ検索であろうと、動画であろうと、表計算ソフトのスプレッドシートであろうと、質問に答えるAIモデルであろうと、かならずメモリーに取り込まれます。DRAMという高速なメモリーは、サーバーやPC、スマートフォンの内部に組み込まれています。NAND型フラッシュメモリーはソリッド・ステート・ドライブ(SSD)に入っている、ファイルを蓄えるメモリーです。HBMは広帯域メモリーの略称です。AIチップの真横に陣取り、大量のデータの迅速な移動を手助けする高性能メモリーです。この3種類のメモリーのうち、カギを握っているのは最後にご紹介したHBMです。なぜなら、AIが膨大な量のメモリーを要求するようになったからです。メモリーの価格はここ1年で6倍以上に急騰しており、DRAM価格が下がり続けた数十年間とは様相が一変しています。価格上昇圧力の出どころはAIインフラ整備です。DRAMの需要に占めるサーバーの割合は2023年には37%でしたが、2028年までには59%に拡大すると弊社はみています。またNAND型の需要に占めるエンタープライズSSDの割合も、18%から65%に拡大すると見込んでいます。要するに、メモリーというパイにおけるデータセンターの取り分はこれからはるかに大きくなっていくのです。AIのメモリー使用量は、どの尺度で見てもハイペースで急増しています。新しいAIチップは以前の世代の製品よりHBMを7.2倍多く使用します。AIシステム全体での使用量はおよそ65倍に増えています。AIデータセンター1棟での使用量なら、この倍数はさらに跳ね上がります。HBMの量は2020年のおよそ10テラバイトから2026年の およそ 約18ペタバイトに増えているのです。まさにケタ違いの増加ぶりです。これだけの需要がサプライチェーンに流入しているわけですが、サプライチェーンは迅速に対応できていません。メモリーの生産能力増強は製造施設の建設、作られる製品の品質確認、そして生産開始までに年単位の時間がかかります。供給の改善はスイッチを入れればすぐに実現するというものではなく、段階的なプロセスなのです。その結果、市場は2つの部分に分かれます。ひとつは、大手AI企業やクラウド事業者が長期契約を結び、代金を前払いして優先的に供給を受けられる市場。もうひとつは、PCメーカーやスマホメーカー、産業機械メーカーなど従来の買い手が、残った製品を求めて競争しなければならない市場です。こうした状況は日常的に使われる製品にも影響を及ぼします。2027年にはPC向けメモリーが15%不足すると弊社ではみています。PCの台数で言えばおよそ5800万台分の不足です。スマートフォンでも およそ 約12%不足する恐れがあります。台数で言えば およそ約1億3400万台分です。PCやスマートフォンのメーカーは価格を引き上げたり、スペックを落としたり、新製品の投入を遅らせたり、利益の減少を受け入れたりしなければならないかもしれません。金額も大変な数字になります。メモリーの市場規模は2025年の およそ約2200億ドルから2026年の およそ約8900億ドルに拡大すると弊社では見込んでいます。2026年のメモリー販売額予想は、わずか3ヵ月の間に71%も上方修正されました。メモリー販売額が2026年だけで およそ約6000億ドル増えるとみていることになります。スマートフォン、PC、サーバーのいずれの年間販売額をも上回る計算になるのです。経済全体が大規模なインフレショックに直接見舞われることはないかもしれません。弊社の試算では、直接的には、2026年の消費者物価指数(CPI)総合指数を およそ約0.1%押し上げる程度です。しかし、メモリー需要がもたらす圧力は生産者物価、企業の利益率、クラウドのコスト、設備投資計画、テクノロジー機器の更新延期などに現れつつあります。AIのおかげでメモリーは、デジタル経済の最も安価な部品から獲得競争の最も激しい資源へと変身を遂げました。今日では、ほとんどの人が気にも留めないあの小さなチップが、どのプロジェクトを実行してどれを延期するのか、そして最終的な費用はいくらになるのかを決めているのかもしれません。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。