Show notes
新たな関税の発表を受けて通商政策が再びニュースになっています。弊社公共政策リサーチ責任者のアリアナ・サルバトーレが、今回の関税は市場を混乱させる要因にはならないと思われる理由を掘り下げます。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は弊社公共政策リサーチ責任者のアリアナ・サルバトーレが、関税をめぐる最新の報道を投資家はどう消化するべきか、そうした報道は景気や市場全体の見通しにとって何を意味しうるのかについてお話しします。このエピソードは6月5日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。関税が再び注目を集めています。米国政府は、60を超える国や地域について行った通商法301条に基づく調査を踏まえ、新たな関税を課す案を公表しました。同時に、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の交渉が本格的に始まった模様です。最近の報道では自動車に注目が集まっており、完成車と自動車部品について域内付加価値比率の基準値が引き上げられる可能性が取りざたされています。一見すると、これらの動きは通商政策における意味のある一段の強化を示唆しているようにも見えます。しかし、こうした報道はさらなる混乱を招く新しい局面の始まりではなく、既存の関税体制の継続と理解すべきだろうと弊社ではみています。通商法301条から順番に見ていきましょう。ご記憶の方もいらっしゃるでしょうが、米国政府は今年2月の連邦最高裁判所の判断を受けて、国際緊急経済権限法(IEEPA)による関税を通商法122条に基づく関税に切り替えました。しかし後者の関税は、7月末に失効する時限的な権限によるものでした。そのため、この期限が近づくにつれて政府は新たな権限による既存の体制の維持を目指すだろうと弊社ではみていました。通商法301条による調査の終結は、まさにその方向への第一歩です。言い換えれば、これは既存の政策の継続なのです。インフレが加速したり経済成長に大きなショックが加わったりしない限り、7月になっても政府は現在の関税の体制を維持するだろうと弊社では考えています。次に問題になるのはUSMCAです。今回の交渉では、域内付加価値比率の基準値引き上げが取り上げられている可能性があり、セクターレベルの混乱が生じる恐れがあります。同様に、3ヵ国すべてが既存の協定を改善しようとすることから、7月の期限到来前に意見対立がエスカレートすることもあり得ると弊社ではみています。とは言うものの、米国、メキシコ、カナダ間の貿易の長期的な提携については、弊社は依然楽観的です。協定からの一時離脱といったような下振れリスクは、構造や手続きによる制約によって限定されるとみています。また、USMCAに基づく適用除外措置(カーブアウト)が、多くの貿易相手国に対する通商法301条対象品目についても維持されると弊社ではみています。これは米国政府が数多くのセクターについて、北米内でサプライチェーン統合を維持することに価値を見出していると思われるためです。総じて言えば、最近の関税のパターンは貿易に対する限界的な圧力を高めるのではなく、弱める方向に向かっていると弊社ではみています。ここ数ヵ月は適用除外、免除、対象範囲が広い業種別関税の導入の遅れなどが散見されます。このことは、関税が川下部門のコストに及ぼす影響に米国が依然敏感であること、そして当然ながら11月の中間選挙に向けて「アフォーダビリティ(モノやサービスが手ごろな価格で購入できること)」が政治的に重要になっていることを示唆しています。こうした見方は、米国経済全体についての弊社見通しとも符合します。弊社エコノミストによれば、マクロ経済は比較的良好な状態を維持しています。経済成長率はトレンド並みの水準を保つと予想され、個人消費は減速するものの失速には至らず、エネルギー価格の上昇や政策の不確実性による景気押し下げ効果を人工知能(AI)関連の旺盛な設備投資が一部相殺するとの見立てです。インフレについてはやはり関税がからんできますが、価格転嫁の大半はすでにデータに反映されている模様です。この点も、株式市場に対する弊社の前向きな見通しと符合します。弊社のストラテジストは、プラスの営業レバレッジ、AIの導入、価格決定力の向上、そして増益のすそ野の拡大などに下支えされた力強い業績拡大局面が訪れるとみています。したがって、投資家のみな様にお届けしたいメッセージは、次のようなものになります。関税政策をめぐる議論はまだ 不透明であり かまびすしく、これに関する報道が相場を動かすヘッドライン・リスクをもたらし続けるでしょう。しかし、米国政府は現在の関税体制を、ますます混乱を招いたり貿易を抑制したりするバージョンではなく、より耐久性の高いバージョンにアップグレードする方向に動いています。通商法122条による関税は通商法301条による関税に切り替えられますが、USMCAのカーブアウトは維持され、アフォーダビリティやサプライチェーンに関するコストが高すぎる場合には関税が適宜免除され続けるでしょう。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。



