Show notes
「パイプ」という詩は、日常の夫婦の一コマを切り取ったかのような詩です。このような困りごとは、誰しも似たような経験があるでしょう。自分でなくしておきながら、「私」をわずらわせる苛立ち。どうしてもっと気をつけないのかと思うその背後には、「パイプ」のように「私」も大切にされていない、気にされていないのではないかという気持ちも込められています。そして、この気持ちの向こうにある「貴方」と「私」の関係が見えてきます。「貴方」にとっての「パイプ」は、「ぞんざい」な扱いでなくしてしまうけれど、「なくなれば大さわぎして/一刻もそのままにはすまされない。」と、大切な筈なのに当たり前でなくてはならないものです。「私」にとっての「貴方」は、手のかかる人で大切にしてもらえないことを嘆くばかりですが、放ってもおけません。日常は、こうした出来事とその向こうにある相手への愛で成り立っていることを思わせます。この詩は、日常の小さな苛立ちの奥に潜む愛情を描き出すことで、私たちに当たり前の大切さを思い出させてくれます。<文・白根直子>

