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衰え知らずのAIインフラ投資の背景にはどのような経済理論があるのか。弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツがご説明します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、ほかではなかなか見られないほど価格感応度が低い状況についてお話しします。このエピソードは5月11日にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。経済学の授業で最初に教えられる概念のひとつに弾力性がありますが、それにはれっきとした理由があります。弾力性とは、物の値段に対する人々の感応度は物によって異なるという考え方です。たとえば、ピザの値段が上がれば、ピザはやめてハンバーガーを選択する可能性があります。しかし、電力のように暮らしに欠かせないもの、あるいは大好きなアーティストのライブのチケットのように欲しくてたまらないものの場合はどうでしょう。大幅な値上げがあったとしても、文句を言いつつ結局はお金を払ってしまうのではないでしょうか。後者のカテゴリーに属するものは「非弾力的」と呼ばれます。これらのものに対する需要は、価格が上昇しても持ちこたえ、かなり価格が上昇しても落ち込まないでしょう。AI関連の拡張投資について論じる際には、この点が非常に重要になってきます。最近市場で交わされる会話の多くがAI、半導体チップ、電力、そしてデータセンターへの投資をめぐるものだと言っても過言ではありません。雇用の創出が急減速しているのに米国の経済成長が落ち込まないのは、イラン紛争をめぐる不確実性が浸透し続けているのに上場企業の業績見通しが下支えされているのは、これらの分野への投資があるおかげです。なぜこの拡張投資が重要なのか。その理由の一つは、とにかく規模が大きいことにあります。弊社の推計では、米国の大手テクノロジー企業が今年行う投資は総額およそ8000億ドル。前年比でほぼ2倍、2024年比なら3倍に当たります。しかし、規模だけが重要なのではありません。この投資はほとんどの場合、コストがいくらかかっても実施される可能性があるのです。具体的に言いましょう。私たちの世界では今、複数の大企業が大規模なAIインフラを全く同じタイミングで増強したがっています。そこで使用される部品や材料が値上がりしているのはそのためです。データセンターをつなぎ合わせるのに必要な銅は、ここ1年間で およそ 約40%値上がりしています。データセンターに電力を供給する発電機のガスタービンは50%高くなりました。データセンターで用いられる半導体メモリーは、ここ1年だけで150~300%値上がりしています。そして、このように極めて大幅な値上がりにもかかわらず、AI関連の投資需要は加速しているのです。2026年の設備投資の弊社見通しはコンスタントに増額修正されています。そのうえ、弊社は今年の設備投資額を8000億ドルと見込んでいますが、弊社の同僚たちの見解によれば、2027年にはさらに増えて1兆1000億ドルに達する公算があります。この非弾力性、あるいは価格に対する非感応性は、設備投資の原資の調達コストにも及んでいます。こうした投資を行う企業の債務コストは今年増加しているのですが、企業の借り入れは今も記録的なペースで行われ続けています。余談ですが、これらの投資のすべてが価格に対して非感応的もしくは非弾力的かもしれない理由は何なのでしょう。それは、これらの企業がAIを、大げさでもなんでもなく、10年に一度の最重要技術かもしれないと思っているからです。これらの企業には財務余力があり、成果が上がるまで待つ忍耐力をもっており、この競争の勝者がまだ明確ではない状況であっても、AI技術をうまく活用できた企業はリターンが見込めるとそれらの企業は考えているのです。AI関連投資の非弾力的な特質は、典型的な一長一短のあるニュースです。まず、非弾力性はこの技術への取り組みが本物であること、そして何らかの外部要因があっても設備投資は簡単には揺らがないことを示唆しています。すると、それが経済全体の成長の下支えに寄与する公算も、今年の企業業績を支える可能性も高まるはずです。弊社のマイク・ウィルソンおよび米国株式投資戦略チームの主張の中核にあるのがこの見方です。しかし、リスクもあります。まず、この歴史的な投資からどの程度のリターンが得られるのかはまだわかりません。投資で必要になる物品の需要が旺盛であれば、その価格の上昇がさらなる価格の高騰を招く恐れもあります。コアインフレ率がFRBの目標をすでに大きく上回っている以上、それはインフレの始まりとなります。そして、企業がAI関連投資資金の借り入れコストにも感応的でなくなれば、ほかの企業の借り入れコストもそれにつられて増加する恐れがあります。弊社は引き続き、米国社債市場における記録的な量の新規発行と小幅なスプレッド拡大を予想しております。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。



