市場の風を読む
市場の風を読む
Morgan Stanley
原油価格急騰の真のリスク
7 minutes Posted Apr 7, 2026 at 7:00 am.
0:00
7:55
Download MP3
Show notes
供給要因によるオイルショックは、まずインフレとして表れます。しかし、モルガン・スタンレーのシニア・グローバルエコノミストのラジーブ・シバルは、投資家が理解すべきは成長、政策、そして市場への二次的な影響であるとして、その理由を解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードでは、弊社シニア・グローバルエコノミスト、ラジーブ・シバルが登場します。オイルショックによる経済的なリスクは、原油価格そのものではなく、その次に何が起きるかである点についてお話しします。このエピソードは4月7日 にドバイにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。原油ショックの影響は、ガソリンスタンドで終わりません。インフレ、成長、中央銀行の政策、そして最終的には市場へと波及していきます。ここ数週間、弊社がお伝えしてきたとおり、今回はこれまでとは状況が違うかもしれません。単なる一時的な価格急騰ではない可能性があるからです。ホルムズ海峡の封鎖は、歴史的にも前例がありません。すでに1か月以上が経過しており、数四半期にわたって続く可能性がある供給ショックの影響に弊社は注目しています。事態は、さらに複雑なものへと発展する可能性があります。足元は、インフレが上昇し、成長が鈍化するという、厄介な組み合わせになっており、しかもその順序は極めて重要です。モルガン・スタンレーでは、世界各地のエコノミストとストラテジストが連携し、原油価格がどのように推移するかについて、幅広いシナリオを検討しました。仮にホルムズ海峡が迅速に再開されれば、原油価格はおそらく比較的すみやかに下落するでしょう。だからといって、原油ショックによる問題がすぐに解消するわけではありません。確かに原油価格そのものは、より早いペースで下落する可能性があります。逆に、完全な封鎖が続き、紛争がさらに激化する場合、原油価格はおそらく、はるかに大幅に上昇するでしょう。原油価格が1バレル125ドルを超える局面になると、通常は需要の破壊が始まります。つまり、価格が高すぎて、人々が原油の消費を減らさざるを得なくなる水準です。その場合、世界経済への影響は、はるかに劇的なものになるでしょう。現在は、その中間のシナリオにあります。原油価格はここ数週間、1バレル100ドルから125ドルの間で推移しており、多くの中央銀行に、疑問や混乱、そしてモデル化の難しさをもたらしています。ここからは、世界の主要地域をいくつか取り上げ、足元で起きていることに各地域がどう反応しているのかを見ていきたいと思います。アジアは少し特殊です。アジアは、中東情勢から最も大きな影響を受ける地域だからです。物理的な量で見ると、中東から出ていく石油・ガスの大半はアジアに向かいます。ただし、アジア諸国の多くには大きな緩衝材となる手段や備蓄があります。さらに財政政策も用いて、原油価格を補助したり、価格変動を抑えることで、消費者が極端なショックを受けないようにしています。その結果として、アジアでは国によって対応が分かれています。どこまで支援を継続すべきかで苦慮している国もあれば、ホルムズ海峡封鎖によって物理的な供給量の確保が必要な国もあります。こうした事情から、中央銀行の政策に「まちまちの影響」を与え、インフレと成長への影響も一様ではありません。物価が速いペースで動き、経済成長も急速に影響を受けている国もあれば、影響が遅れて表われる国もあります。今後数四半期は、こうした強弱まちまちの状況が続くと弊社はみています。ユーロ圏は、インフレの波及が非常に速いという点でアジアとは対照的です。過去の例では、インフレの反応は総合インフレ率だけでなく、コア部分も反応してきました。こうした点を踏まえ、ECBは、インフレ期待がアンカーを失うことを避けるため、近い将来に利上げを行う可能性が高いと示唆しています。現時点ではECBは、成長リスクよりもインフレのペースを重視しています。これは、FRBとは対照的です。米国では実際のところ、原油の供給ショックがコアインフレを押し上げる度合いは、世界の多くの地域ほど大きくありません。総合インフレ率と個人消費には影響が及ぶものの、コア部分のインフレには必ずしも影響が表われるとは限りません。ここで忘れてはならないのは、米国がサービス中心の経済である点です。そのためFRBは、コアインフレへの波及効果が他の諸国よりはるかに小さいことから、供給ショックの影響をある程度「一時的とみなしてその先を見る」とともに、成長を重視する可能性が高くなります。つまりFRBは、米国におけるインフレへの波及という物価のリスクよりも、ガソリン価格の上昇が成長に与えるリスクの方を、より強く意識しています。これは世界の多くの地域とは全く対照的です。ただ、重要なのは、どの国、どの地域でも反応は異なるという点だと思います。原油の供給ショックでは、インフレが先行し、そのあとに成長が続きます。しかし、それが各国の国内経済に波及する経路は大きく異なります。このため、中央銀行も異なる対応が必要となります。さらに、この状況があと2四半期ほど続くようであれば、財政政策の対応も国ごとに異なると予想されます。市場参加者、エコノミスト、そしてストラテジストにとっての課題は、今回のオイルショックがもたらす混乱の規模を正確に見極めることです。現時点で分かっているのは、その期間が「数か月」ではなく「数四半期」に及ぶということです。そして、それ自体が、インフレの上振れリスクよりも、成長の下振れリスクのほうが大きいと弊社が予想する理由でもあります。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。