
2021年8月7日の初回放送から全230回にわたってお送りしてきたこの「フレンチ・クラシック・カフェ」もいよいよ最終回となりました。パーソナリティの中田昌樹さんが最後に選んだのはモーリス・ラヴェルの作品です。音楽評論家の吉田秀和氏が、ラヴェルの数ある名曲の中からあえて1曲選んだのが、その「壮大さ」と「ノスタルジー(郷愁)」が深く関わっている『ラ・ヴァルス』ですが、中田さんは構造やテンポ設定に、当時の音楽界において極めて革新的な要素が込められているとして、『ボレロ』を選びました。この作品の最大の特徴は、その圧倒的なシンプルさにあります。この曲はわずか2本の旋律しか持たず、その下で同一のリズムが最初から最後まで執拗に繰り返され、かつ 曲のほとんどがハ長調で書かれており、最後になるまで転調しません。このように同じ調性を突き進むことは当時としては驚くべきことでした。また、ラヴェルは、音楽が盛り上がるにつれて演奏が加速しがちなところ、「同じテンポでやり通すこと」を強く求めていました。映画『ボレロ 永遠の旋律』でも描写されているように、ラヴェルはこの曲に工場の機械的な音のイメージを重ねていたという記述があり、感情的に速度を上げるのではなく、一定の速度で進む「機械性」が彼の本意だったのかもしれません。これまで「フレンチ・クラシック・カフェ」を温かく支え、聴き続けてくださったリスナーの皆さまに、心より感謝申し上げます。この番組を通じて、皆さまのフランス音楽への理解が少しでも深まったのであれば、これほど嬉しいことはありません。これからも、素晴らしいフランス音楽が皆さまの日常を彩ることを願っております。本当にありがとうございました。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】モーリス・ラヴェル作曲『ボレロ』 レナード・スラットキン/指揮 フランス国立リヨン管弦楽団/演奏 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団
Dec 26, 2025
23 min

今週もクロード・ドビュッシーの『ヴァイオリン・ソナタ』をお届けします。このソナタはドビュッシーが自らの命が残り少ないことを感じつつ作曲し、亡くなる1年前まで自らこの曲を演奏していたという事実が、作品に特別な「重さ」を与えています。生き生きとした第1楽章、気まぐれで軽い第2楽章、そして非常に活気のある第3楽章という構成ですが、これらがバラバラにならず、一つの球体や三角形のようなまとまりを持って存在しています。音があちこちへ飛んだとしても、最終的には元の場所へ戻ってくるようで、それが一種の諦念や悟りのような人生観を感じさせます。また、ヴァイオリンとピアノという最小限の編成でありながら、まるでオーケストラのように多様な形や響きが見えてくる不思議な深みがあります。ドビュッシーの『ヴァイオリン・ソナタ』は、激動の過去を振り返り、死を見つめながらも、最終的には静かに円を描いて戻ってくる「人生の旅路」そのものを凝縮したような作品と言えるのかもしれません。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】モーリス・ラヴェル作曲『ヴァイオリン・ソナタ 第二番 ト長調』 スヴェトリン・ルセフ/ヴァイオリン(Strad. Violin1710"カンポセリーチェ") 上田晴子/ピアノ(2018年4月18日浦安音楽ホール)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団
Dec 19, 2025
23 min

今週はクロード・ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタをお届けします。フランスを代表するドビュッシーとラヴェルという2人の作曲家が、人生の最後にヴァイオリン・ソナタを書いたのは不思議な偶然でしょうか。ドビュッシーは、この曲で調性にかなりこだわっており、ト短調(g-moll) を使用しています。これは、ドビュッシーの弦楽四重奏曲もト短調であることから、弦楽器の調弦との関係で、楽器の性能を活かしやすい調性であるためと考えられます。ドビュッシーの作品としては珍しく、三楽章形式の楽章間のバランスが非常に良く取れています。この曲は亡くなる1年前に書かれ、初演は1917年5月5日にサル・ガヴォーで行われました。ドビュッシー自身がピアノを弾き、ヴァイオリン・ソロはガストン・プーレという人物が務めました。その息子であるジェラール・プーレもヴァイオリニストで、父親が書き残した弓使いや指使いを校訂した楽譜を出しており、日本にも度々訪れてこのドビュッシーのソナタを演奏しています。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】モーリス・ラヴェル作曲『ヴァイオリン・ソナタ 第二番 ト長調』 スヴェトリン・ルセフ/ヴァイオリン(Strad. Violin1710"カンポセリーチェ") 上田晴子/ピアノ(2018年4月18日浦安音楽ホール)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団
Dec 12, 2025
12 min

今週もラヴェルのヴァイオリン・ソナタ第二番をお送りします。この作品は、ソナタという形式をとっていますが、各楽章が8分、5分、3分と次第に短くなる独特な構造をしています。また、長らく存在が噂されていたヴァイオリン・ソナタ第一番ですが、生誕100年記念の際、その幻の第一番が発見され、第1楽章がようやく出版されました。この楽章を聞くとラヴェルの師であったフォーレの作風に酷似していて、それが故かラヴェルが作曲を中断または破棄したのかもしれません。第2楽章のジャズ的な要素は、意外にもラヴェルがアメリカを訪問する前年の1927年に書かれていたのですが、その後のキャリアで『ボレロ』を生み出すに至った背景としての1928年のアメリカ旅行の意義にも少し触れます。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】モーリス・ラヴェル作曲『ヴァイオリン・ソナタ 第二番 ト長調』 スヴェトリン・ルセフ/ヴァイオリン(Strad. Violin1710"カンポセリーチェ") 上田晴子/ピアノ(2018年4月18日浦安音楽ホール)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団
Dec 5, 2025
27 min

今回より4回にわたって、モーリス・ラヴェルとクロード・ドビュッシーが晩年ともに手がけた『ヴァイオリン・ソナタ』をお届けします。ラヴェルの場合、中期に『ダフニスとクロエ』のような大きな曲を書き、その後はだんだん編成が小さくなり、最後は『クープランの墓』や『マ・メール・ロワ』のように音がどんどん少なくなっていくという作風の変化がありました。ドビュッシーもまた、晩年に来て、ヴァイオリンとピアノという、ある意味で最も小さい編成の曲に取り組んでいます。大規模な作品で知られる彼らが、人生の終わりが見えてきたような時期に、こぢんまりとした編成の形式に収まったという点で不思議な共通点です。ラヴェルは実際にはヴァイオリン・ソナタを2曲書いていますが、一般に知られているのは第2番です。これはラヴェルがアメリカ旅行に行く前の年の1927年に書かれましたが、意外にも第2楽章にはジャズ的な要素が見られます。また、伴奏の調とメロディの調が最初は異なり、後に一緒になることも特徴的です。第3楽章には、終始引き続ける「無窮動」のような部分が含まれており、ヴァイオリンの運指(フィンガリング)において難しいことが書かれています。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】モーリス・ラヴェル作曲『ヴァイオリン・ソナタ 第二番 ト長調』 スヴェトリン・ルセフ/ヴァイオリン(Strad. Violin1710"カンポセリーチェ") 上田晴子/ピアノ(2018年4月18日浦安音楽ホール)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団
Nov 28, 2025
23 min

今回は、バロック時代の作曲家ジャン=マリ・ルクレールの『2つのヴァイオリンのためのソナタ』をお届けします。バロックという言葉は、もともと「バロッコ」(Barocco)という言葉に由来し、これは「歪んだ真珠」を意味すると言われています。バロック音楽は、それまでの安定した教会音楽に対して、楽器の発達と新しい奏法の登場によって、例えばヴィヴァルディの『四季』など、より速く、豊かに、そして劇的に動く表現力を獲得した新しい時代の音楽を指しますが、これが当時の人々にとってはとても過激な音楽に聞こえたのではないかと考えられます。フランスでは、ルイ14世が自ら舞踏(バレエ)を踊った影響で、その音楽文化は舞踏と強く結びつきました。このルクレールのソナタにおいても、3拍子系のジグや2拍子系のガボットなど、舞曲のステップのリズムが各楽章に反映されています。ルクレールは、ルイ15世の時代にヴェルサイユ宮殿に呼ばれ、またオランダ貴族の宮廷(オラニエ公家)で楽長を務めるなど、高い地位にいましたが、最後は貧民街で惨殺体で発見されるという悲劇的な最期を遂げています。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】ジャン=マリ・ルクレール作曲 『2つのヴァイオリンのためのソナタ』 ステラ・チェン /ヴァイオリン(Strad. Violin1708"ハギンス" イム・ジョン /ヴァイオリン(Strad. Violin1717"サセルノ") (2024年1月25日サントリーホール・ブルーローズにて演奏・収録)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団
Nov 21, 2025
31 min

ダリウス・ミヨーの「2つのヴァイオリンとピアノのためのソナタ」の第3楽章です。この作品には様々な作曲家の作風が混在していますが、この多様性は、彼がパリ音楽院で師事したポール・デュカスの影響が流れとしてあるかもしれません。デュカスは、表面的なものだけでなく、深みのある音を考える作曲家であり、ミヨーもその深い思考を教え子に引き継がせた可能性があります。第二次世界大戦期以降は、カリフォルニアのミルズカレッジなどで教鞭を取るなど、アメリカで活躍。彼の著名な教え子としてデイヴ・ブルーベック、バート・バカラック、フィリップ・グラスといった幅広い分野の音楽家がいます。今回の演奏に使用されたストラディヴァリウスの貴重な名器としての来歴や、それを貸与する日本音楽財団の活動についても触れられています。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】ダリウス・ミヨー作曲 『2つのヴァイオリンのためのソナタ』第3楽章 樫本大進 /ヴァイオリン(Strad. Violin1722"ジュピター" 佐藤俊介 /ヴァイオリン(Strad. Violin1725"ウィルヘルミ") 市野あゆみ/ピアノ(2004年4月4日Universität Mozarteum Salzburg Großer Saal にて演奏・収録)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団
Nov 14, 2025
15 min

ダリウス・ミヨーの「二つのヴァイオリンとピアノのためのソナタ」の第2楽章です。バロック時代の成熟した、トリオ・ソナタという、声部も形式も三部で成り立つ、音楽的にも基本となる形式に、多彩な様式の音楽を巧みに紡ぎ込む手法が際立つ技法は秀逸です。ミヨーの作風を語る上で「折衷主義」という言葉が使われることがありますが、西洋におけるこの概念には二つの考え方があります。一つは、複数のものから良いところを「抽出」して組み合わせるエクレクティシズム、もう一つは、複数のものを混合するシンクレティズムです。ミヨーは、後者の「混合」に近いと考えられます。様々な作曲家の多様な要素を合わせることで、まるで色を混ぜて全く別の色を生み出すように、独自の音楽を作り上げました。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】ダリウス・ミヨー作曲 『2つのヴァイオリンのためのソナタ』第2楽章 樫本大進 /ヴァイオリン(Strad. Violin1722"ジュピター" 佐藤俊介 /ヴァイオリン(Strad. Violin1725"ウィルヘルミ") 市野あゆみ/ピアノ(2004年4月4日Universität Mozarteum Salzburg Großer Saal にて演奏・収録)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団
Nov 7, 2025
16 min

今週から3回に渡り、ダリウス・ミヨーの『2つのヴァイオリンのためのソナタ』をお送りします。 商取引で財を成した非常に裕福な家庭で、音楽に憧憬が深い両親に育てられ、10歳の時にはドビュッシーのオペラ『ペレアスとメリザンド』の楽譜を見ていたほど音楽的にも早熟でした。パリ・コンセルヴァトワールで学びながら、ほかの作曲家から多くの影響を受けたかたわら、彼らの作風を自由に巧みに自らの作品に取り込みました。それがミヨーの曲の中で独自の多様性となって現れました。また、ドビュッシーやサティのように、様式から逸脱することなく、形式感を保っていることも特徴のひとつです。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】ダリウス・ミヨー作曲 『2つのヴァイオリンのためのソナタ』第1楽章 樫本大進 /ヴァイオリン(Strad. Violin1722"ジュピター" 佐藤俊介 /ヴァイオリン(Strad. Violin1725"ウィルヘルミ") 市野あゆみ/ピアノ(2004年4月4日Universität Mozarteum Salzburg Großer Saal にて演奏・収録)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団
Oct 31, 2025
16 min

今週も、エルネスト・ショーソンの『詩曲』です。ブルジョワ出身のショーソンは、よくヨーロッパ各国を旅していたようです。その中で偶然バイロイトでワーグナーを聞く機会があり、その後セザール・フランクと共に彼の地をしばしば訪れることとなります。もともとオーケストラ版で書かれたこの『詩曲』も内性が厚く、ワーグナーの影響が色濃く出ています。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】アーネスト・ショーソン作曲 『詩曲』(ピアノ版) ヴィヴィアン・ハーグナー /ヴァイオリン(Strad. Violin 1717 " サセルノ") サイモン・クロフォード-フィリップス/ピアノ (2001年4月18日ストックホルムのThe Royal Churchにて演奏・収録)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団
Oct 24, 2025
35 min
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