今夜はひとつだけ
今夜はひとつだけ
Asagi Kimura
「午前五時、潮が満ちるとき」Asagi Kimura
2 minutes Posted Sep 12, 2021 at 2:18 pm.
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手綱を引く手をはなす
ほどよいきしみ 骨の間にまだいる
それはあっという間のことで
誰もわたしが手を離したことなんて
みちゃいなかっただろう
きっと私だって気づいちゃいなかった
手をはなしたがっていたことに
自由を信じていた水牛
そらへむかって走り出す
この時をずっと待っていたことに
誰にも気づかれないように
もっと深いところへ逃げなきゃならないよ
後ろで彼らが銃をかまえているから
たかくたかく海にもぐんなきゃいけない
牛の身体は牛舎とまざりあってた
ぎんいろの旗
日焼けした肌
水をこぼしたみたいなあざ
口に入れられる甘い石
うすぐらい、ほしくさ、土に戻る前の
私はそのことをどうやら忘れていたのさ
牛は走り出せなかった
牛舎をおいてはいけないからね
からだに釘打ち離れられないからね
釘がいつもよりも
わたしのおくにいて
それがここちよくなっている
そのことに気づかないうちに
逃げなきゃいけなかったんだ
牛はそうしてゆっくり立ち止まって
銃のひきがねをひいた
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午前五時に満潮を迎える日に向けてかいた詩です。